世界的に1型糖尿病の発生率が増加しています。1型糖尿病に感受性がある人は引き金として食事などの環境因子があるということが広く知られています。そして牛乳タンパク質への初期の曝露は、特に遺伝的に感受性のある子供では、1型糖尿病と強く関連することが示されています*1*2*3。
2017年5月の論文は、牛乳のA1β-カゼインが、遺伝的危険因子を持つ個人の1型糖尿病の主な原因トリガーであるという証拠を提示しています*4。
なぜ牛乳が1型糖尿病の引き金になってしまうのかについては、次のような機序が考えられています。
- 1型糖尿病に遺伝的危険因子を持つ子供が乳児用人工乳などで牛乳を与えられる
- 部分的にしか消化できず牛乳タンパクの断片が血中に吸収されることがある
- 免疫システムはこれを異物として攻撃するが、ここにある問題が起こる。それは断片の中に血糖値を調整する重要な役割を持つインスリン製造に関与している膵臓の細胞とまったく同じに見えるものがあること。
- 免疫システムは牛乳タンパク断片だけでなく膵臓の細胞も破壊し、子どもはインスリンを作る能力を失います
1型糖尿病と牛乳摂取は関係ないとしている研究も存在しますが、それは「関係ない」としているだけで牛乳摂取が1型糖尿病にメリットがあることを示しているわけではありません。少なくとも牛乳摂取が1型糖尿病のトリガーとなることが統計的に示されている以上、リスクがあると認識しておいた方が良さそうです。
*1 N Engl J Med. 1992 Jul 30;327(5):302-7.A bovine albumin peptide as a possible trigger of insulin-dependent diabetes mellitus.
*2 Diabetes Metab Rev. 1998 Mar;14(1):31-67.Putative environmental factors in Type 1 diabetes.
*3 Diabetologia. 2001 Jan;44(1):63-9.Short-term exclusive breastfeeding predisposes young children with increased genetic risk of Type I diabetes to progressive beta-cell autoimmunity.
*4 Nutr Diabetes. 2017 May 15;7(5):e274. doi: 10.1038/nutd.2017.16.A1 beta-casein milk protein and other environmental pre-disposing factors for type 1 diabetes.