赤ちゃんであれば牛の乳でも与えてもいいというわけではありません。
牛の乳は、文字通り「牛」の赤ちゃんの母乳です。産まれてすぐに歩けるようになる体重40kgほどの牛の赤ちゃんにとって最適なものであり、人間の赤ちゃんのためのものではありません。人間の赤ちゃんにとって最適な乳もまた人間のお母さんの乳です。WHO(世界保健機関)は母乳代替品のマーケティングの国際規範(International Code of Marketing of Breast-milk Substitutes)において、人間の赤ちゃんに最適なのはお母さんの乳であり、乳児用人工乳(ほとんどの場合、牛の乳が入っている)のラベルには「母乳育児の優位性」について明記しなければならないとしています。
しかし幼児用人工乳の企業(フォーミュラ企業)にとっては、赤ちゃんの健康よりも売り上げのほうが重要で、2005年から2016年には広告費を4倍も費やし、それに伴い幼児用人工乳の売り上げは2.6倍に上昇しています。
専門家たちは、フォーミュラ企業がマーケティングに使うメッセージ(幼児の栄養、認知発達、成長に有益であることを示す)が真実であるという実質的な証拠はないと言っています。2020年5月、ロンドンのインペリアルカレッジの小児アレルギー専門医であるロバートボイル氏らはこのマーケティングを潜在的に有害であるとして、規制当局に乳児用人工乳の健康関連のマーケティング表示を禁止するように求めています。
NEWS RELEASE 4-FEB-2020 Ad spending on toddler milks increased four-fold from 2006 to 2015
Ban marketing claims for baby milk formula, experts urge by Press Association 06/05/2020, 11:31 pm
乳児の肥満
UCLの小児栄養学の教授であるMary Fewtrell氏は次のように言っています。
乳児の高タンパク質摂取がより急速な成長と肥満に関連しているという証拠が増えています。また、動物性タンパク質(場合によっては他の動物性タンパク質よりも乳製品)は植物性タンパク質よりも強く関与しています。
Obesity warning for parents after study finds toddlers ‘consume four times too much protein on average’Friday 19 May 2017
乳児の鉄欠乏症・脱水・潜血など
乳児期後期は急激な体の成長に伴い鉄不足になりやすいですが、牛乳は乳児の鉄栄養に悪影響を及ぼすといわれています。「乳児における牛乳の悪影響」というレポートでは、その原因として、潜血による失血、牛乳から大量に提供されるカルシウムとカゼインが、食事中の非ヘム鉄の吸収を阻害することをあげています。またレポートは、牛乳には必要以上のタンパク質とミネラルがあるため過剰な分を排除しようとする体内の働きにより、脱水症をおこす可能性があると指摘しています。
“Adverse effects of cow’s milk in infants”, 2007;60:185-96;
9〜12 か月の乳児における腸潜血と鉄欠乏の発生を検証した研究では、牛乳を与えられた乳児では、潜在的な糞便失血が鉄欠乏症の悪化要因だとしています。
最初の誕生日の前に牛乳を導入すると、潜在的な胃腸出血のリスクが高まり、鉄欠乏性貧血の発生率が高くなることが研究によって示されています。