骨粗しょう症予防のために牛乳を、という情報が氾濫しています。
丈夫な骨を作るために牛乳、というイメージを抱いている人がいるかもしれません。しかし、疫学および前向きコホート研究の結果は、乳の使用が骨の健康を促進するという有効性について疑問を投げかけています。
これについて2005年、丈夫な骨=牛乳を裏付ける証拠があるのか調査した論文が発表されています。この調査では22の横断研究。13の後ろ向き研究。10件の縦断的前向き研究、13件のランダム化比較試験が精査されました。その結果子供や青年期の骨の石灰化を促進するための牛乳、乳製品の摂取量の増加を推奨する栄養ガイドラインを裏付けることができる証拠は乏しい、と結論付けています。
骨折しやすくなるという研究さえあります。
22年間にわたる前向きコホート研究では、10代の間に1日に1杯の牛乳を追加するごとに、股関節骨折のリスクは有意に9%高くなりました。
20歳での乳製品の消費は、年を取ってからの股関節骨折のリスクの増加と関連することがわかりました。
78,000人の女性を対象とした12年間のハーバード大学の研究では、1日に3回牛乳を飲んだ人は、めったに牛乳を飲まなかった女性よりも骨折しました。
オーストラリアのシドニーでの年配の男性と女性の1994年の研究は、乳製品消費量の増加が骨折リスクの増加と関連していることを示しました。乳製品の消費量が最も多いものは、消費量が最も少ないものと比較して、股関節骨折のリスクが約2倍でした。
Calcium and Strong Bones Physicians Committee for Responsible Medicine
しかし、もっとも衝撃だったのは、2014年に発表された「牛乳の摂取量と女性および男性の死亡率と骨折のリスク:コホート研究」でしょう。この研究は106,722人のスウェーデンの男女を最大29年間の追跡調査したものですが、男女ともに牛乳の摂取量が多くなると骨折率が高くなる、という結果をはじき出しています。
これは国内でも話題になり乳業界はこれへの反論を必死で模索していますが、この研究については次の「死亡率」の項でもう少し詳しく書きます。